『リチャード・ジュエル』

2020.01.28 Tuesday 23:16
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    クリント・イーストウッド監督を「トーンの魔術師」と呼ぼう。

    本作で一番感じたことは、暗と明を使い分ける、光の演出が素晴らしい。

    ただ、絵としてのトーンではなく、良心と悪心、正義と不義、厳しさと優しさ、美しさと醜さといった、人間の心の中が表現されている。

     

    はっきりとしたものから柔らかいもの、微妙なものと使い分けていることで、余計なセリフが排除されて奥行き深い心情が語られてきた。

     

    取り扱ったテーマも、実際に起きた事件を元に、「信じる」という、誰にでもありながら、揺らいでしまうものである。

     

    1996年のアトランタ・オリンピックが開催される中、近くの音楽イベント会場で起きた爆破事件。

     

    そんなことがあったなんて知らなかった。

     

    正義感が強く、人を守りたいと警察官に憧れた青年リチャードが、警備員で働いているときに、見つけた不審なバッグが爆発する。

     

    英雄と称えられたが、FBIは第一発見者であるリチャードを疑い、スクープを欲しがる地元の新聞会社が確実性もないまま発表したことから、彼の毎日は地獄に落ちていく。

     

     

    メディアの力は、トランプの「フェイクニュース」騒動からより一層、問題視されることである。

     

    私も3.11から信じられなくなったりした。

     

    そうさせてしまうのは、名声、権力に群がるからであろう。

     

    この事件も、一人の女性記者が、女という武器を使ってFBIから情報を取り、強引にでも他者を抜き、会社の中でも賞賛を浴びる。

     

    そういう奴らは、人のことなんてお構いなし。

     

     

    息子を信じる母役がキャシー・ベイツだが、素晴らしい演技で心を動かされた。

     

    自分には、恐ろしいストーカーの『ミザリー』(本作品でアカデミー主演女優賞受賞)がいつまでも残っていたが、今回で払拭された。

     

    ちなみに、今回の役は「バーバラ・ジュエル」だが、ニックネームとして「BOBI」と呼ばれている。

     

    音ならまだしも、字幕で「ボビ」と出るのは初めての体験で、悪い気にはならなかった。

     

     

    他の俳優陣もサム・ロックウェルをはじめリアリティが根付いていて、ストーリーに深みを与えていた。

     

    特に、先に紹介した、問題の発端である、女性記者を演じたオリビア・ワイルドが良い。

     

    前から好きな女優であるのに、今回は嫌な女だと思わせてくれるのが見事。

     

    観る人がいるだろうから書かないが、彼女の変化を良いところで終わらせる脚本、監督の力が心地良い。

     

    彼女に関していえば、10年前に「セクシーな女優」で1位になっている女性だが、ラブシーンとか無くて、物語の緊張性が損なわれなくて流石イーストウッドです。

     

     

    本当に毎回素晴らしい映画を作るイーストウッド監督には尊敬はもちろん、脱帽します、参りました。

     

    レオナルド・ディカプリオもプロデュースに参加している。

     

    しかし、興業収益は監督作品で異例の低さだそうです。

     

    監督には変わらずこのまま優れた作品を生み出していって欲しいです。

     

    人を超えた地球のトーンを、平和の色合いに変えていく魔術師として。

     

    ボビ

    category:映画 | by:bobi kazunaricomments(0) | -
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