『1R1分34秒』
2019.11.27 Wednesday 21:13
JUGEMテーマ:読書
第160回芥川賞受賞作品。
前に読んだ『ニムロッド』と同じ時に受賞している。
『ニムロッド』はビットコインの話で、こちらはボクシング。
エンターテイメントにボクシングを扱うのは映画をはじめ多数あるが、もちろん『あしたのジョー』は最高、小説で、それも純文学でというのが珍しい。
読んでみると、派手な試合のことではなく、一人のプロボクサーの心境が綴られていく。
自分も役者のためにと、通ったことがある。
もちろん、試合に出るわけでもなく、ジムに行ってシャドウやサンドバッグといったものだが、あの風景が蘇って、物語の中にすっと入っていけた。
戦う相手を事前に研究していくうちに、頭の中で友達になってしまうというのは、興味深いが何となく理解できる。
身近な存在になることで、会ったこともないのに親近感が湧くというのは、アイドルなどを追いかける人や有名人のファンに似ているのだろうか。
この作品はボクシングということもあり、一人でのし上がっていくという考え方をする主人公で、自分も含め、集団活動が苦手な人には共鳴するのであろう。
そして、人のありがたさも分かっている、接し方や表現が下手な上で。
作家である町屋良平氏は大学を行かないで小説を書きはじめ、ボクシングも習ったという。
満を持しての受賞なのであろう。
BOBI