『清貧譚』

2018.09.16 Sunday 20:57
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    1776年、中国、清代の怪異小説集「聊斎志異」の中の一篇に太宰治が空想を交えて創作した短編小説。

    菊の花が大好きな男が江戸から伊豆の沼津へ佳い苗を取りに行き、帰り道に菊作りには心得があると言う少年と姉と出会い、無一文のため江戸へ出て仕事を探すということから、自分の小屋を貸して住まわせ、菊の畑を作っていく。

    男は先祖の残した土地があるので、富を求めず、正しい行いをして貧しくあることを好み、少年は暮らしていくために菊を栽培しては売り、どんどん富んでいく。

    考えの異なる二人は仲違いするが、男は姉と結婚話も出たりと、同じ敷地内で住みながら、最後は素晴らしい菊を作る少年を認め弟子にしてくれと言う。

    怪異小説であるから、この少年の正体がユニークなのだが、これから読む方へのお楽しみとして伏せておく。

    そのミステリーさが面白いというより、ここで扱われている「清貧」に太宰治の色が練りこまれている。

    愛する花を売って米塩の資を得ることは、菊を陵辱することだと言い、己の高い趣味を金銭に換えるのを汚らわしいと訴える男に対して、天からもらった自分の実力で金を稼ぐのは富を貪る悪業ではないという少年は言う。

    「人はむやみに金を欲しがってもいけないが、けれども、やたらに貧乏を誇るのも、いやみな事です」

    好きなものでお金を稼げて暮らしていけるのは幸せなことだと思うし、それが出来るのは一握りの人間だろう。

    しかし、職業にするとなると、ほとんどの場合、純粋な自分の考え方は多少なりと曲げられていく。

    人が介在するからだ。

    生きるために、金を得るためには、それは必要であることだ。

    自分が役者の道を歩み、フリークルーズという自分の城を築いた頃は、この男に同調する部分が多々あった。

    理想よりも現実。

    今を生きる。

    このもがきはこれからも続く永遠のテーマかもしれない。

    BOBI
    category:小説 | by:bobi kazunaricomments(0) | -
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