『黙示』

今野敏氏の、警視庁捜査三課萩尾警部補シリーズの第三弾を読了。
 

 

 


最初の『確証』、2作目の『真贋』と少し違う味わいだった。

ソロモン王の指輪が盗まれるという事件から始まるのだが、そもそもソロモン王って誰かということで、その部分がミステリアスになっていて、事件の解決に向かっていく。

捜査三課ということで、窃盗が主になる話なのでしょうがないが、今回はとくに頭の中での事件となり、展開に迫力がかける。

美術品や歴史などが好きな人には別の楽しみがあるのだろう。

氏の作品をたくさん読んだわけではないが、任侠シリーズで伝わってきたように、人間味が物語から滲んでくるのがとても好きである。


『覆面作家』

気になって手にした大沢在昌氏の短編集。



どれも読みやすく面白かった。


エピソードがバラエティに富んでいるのもその理由だが、「私」なる作家がすべての主人公で描かれていて、それは大沢在昌氏本人とうかがえるからだ。


よって、小説家や出版業界のことにも触れることができる楽しさがある。


8作品収められているうちの一つがタイトルであるが、まさにこの中の「私」が本名を隠した覆面作家という意味になっているともとれる。


45年の作家活動、原稿は手書き、書いたら飲みにいく、おそろしいハードボイルド作家に感服する。


『Story Seller』

いろいろな人の短編が読みたくなってこちらを購入。

 

 

読み応えは長編並、読みやすさは短編並。

 

そんなキャッチコピーが書かれているなら、と期待してページをめくりだした。

 

たしかに、面白かった。

 

とくに心を打たれたのは、米澤穂信氏の『玉野五十鈴の誉れ』である。

 

名家の娘が15歳の日に召使いの女をあてられる。

 

玉野五十鈴は娘と同じ年齢だが、立ち振る舞いは美しく教養もある。

 

娘は五十鈴を気に入り、大学に通うことを口実に家を出て二人で住みだす。

 

充実した日々も長くは続かない。

 

地元で起きた殺人事件が、すべてを狂わしていく。

 

あとは読んでのお楽しみなのだが、この殺人事件が起きることすら予想だにできない雰囲気ではじまる作品で、そのあとの展開にも驚かされ、すっかり虜となる。

 

ラストではタイトルの意味、「誉れ」が理解できて心がざわめく。

 

 

このシリーズ、他にも3作あるようなのでまたチェックしてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

『真贋』

先日読んだ『確証』の次作をAudibleで。

 

 

警視庁捜査三課の萩尾と秋穂のコンビシリーズ第二弾に当たる。

 

タイトルのとおり、今回の事件は美術品がデパートの展覧会で飾られ、それが偽物とすり替えられたということに。

 

美術品は「曜変天目」。

 

中国の南宋時代につくられたとされ、世界に三つしか現存しておらず、それがすべて日本にあるという国宝である。

 

デパート、警備会社、美術館、そして窃盗犯に古物商と、曜変天目をめぐるミステリーを警視庁捜査三課に捜査二課、さらに渋谷署に目黒署と所轄の協力を得て解決していく。

 

今野敏氏のテンポ良いストーリーで進んでいくので、ちょっとした時間でもスマホで聴いていける。

 

第三弾はどんな話か期待。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『確証』

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警察小説を読みたくなって、Audibleでこちら。

 

 

警察用語はいくつか出てくるものの、聴いて読むのは問題なかった。

 

こちらはテレビドラマ化もされたシリーズものの第1作目。

 

警視庁捜査三課(窃盗事件を扱う)のベテラン刑事と女性刑事のバディものである。

 

高級時計店と宝飾店二軒で盗難が起きるが、そのうちの一件が強盗殺人だったため、捜査一課の事件となる。

 

事件解決が本来の目的であるゆえ、三課の二人も捜査本部に加わることになる。

 

しかし、そこで生まれる花形の捜査一課と三課の軋轢。

 

 

警察小説は相変わらずの人気だが、専門的なこととかわからないしと敬遠していたところもあったが、さすが今野敏氏です、すごくわかりやすく伝えてくれる。

 

 

自分はラジオ『BOBIのコトバケーション!』で即興連続刑事ドラマを毎週行い、爆破テロ事件を追いかけているが、こういった小説を読んでいけば犯人逮捕ができるかもしれない。

 

『死刑にいたる病』

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阿部サダヲさんの無感情の目に引っ張られた映画の宣伝で気になっていた作品を原作でのぞいてみた。

 

正確にいうと聴いてみた。

 

 

九人の殺害で起訴されているが、最後の殺人は自分ではない、冤罪だと昭明してくれないかと訴える連続殺人鬼。

 

その依頼を受けた大学生男子は調べていくと意外なる事実を知っていくという物語。

 

真実をつかむだけではなく、もう一つ厄介な病まで襲われていく。

 

作品内でも海外の有名な殺人鬼が紹介されていき、ノンフィクションの雰囲気にもつつまれる。

 

最後に納得をして読了、と思いきや「え」と息をのんでしまう事象をたたきつけられて唖然とした。

 

そういうことなのか、と驚きながら作品内をさかのぼる。

 

こういうときにAudibleは探すのが大変である。

 

本ならページをめくりながらワードを追って見つけることができる。

 

伏線が多い作品は書籍の方がいいかもしれない。

 

 

映画を観るのが楽しみになった。

『ヘッド・ハンター』

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再び大藪春彦作品を読了。

 

 

表紙から伝わるように、狩猟の話である。

 

アラスカとニュージーランドの2話を収録。

 

狩猟と銃およびキャンプの専門用語が紙面を埋め尽くす、細部にこだわった描写がもはやノンフィクションに感じた。

 

実際大薮氏の体験をもとに書いているそうだから、リアリティはとてつもない。

 

小説だと信じて読んでいくと、ふとヘミングウェイの『老人と海』が重なった。

 

記録となる獲物を求める主人公と老人が被ったのだ。

 

『老人と海』は感動して涙がこぼれ落ちたが、これはそうではない。

 

圧巻であり、やはり動物だけでなく人間も殺しまくる、ストーリーがあってないようなものである。

 

そう、主人公のストイシズムとその行動のみが描かれている。

 

昔読んだ開高健の『オーパ』も思い出した。

 

 

話はずれるが、主人公が狙う獲物で何度も「スタッグ」と出てくる。

 

stag=牡鹿のことである。

 

おととい観た『有頂天ホテル』で鹿の研究者のパーティーがあり、これが一つの喜劇を作っていて役所広司さんが大いに笑わせてくれる。

 

それは「stag」を「stage」と読み間違えた副支配人は、昔の妻と再会したときに見栄を張って、今でも「stage director(舞台監督)」をしていると嘘をつくのだ。

 

ところがその元妻の現旦那が「stag director」であるという皮肉な事実。

 

シリアスな狩の瞬間を読んでいるのに、何度も役所広司さんが鹿の被り物を頭につけているシーンがよぎった。

 

 

本作品は1982年と後期の作品。

 

誰かが小説があれば世界中を旅できると言っていたが、まさにこれは北極と南極に近いところまで運んでくれた。

『弁護側の証人』

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前から読もうとしていた作品をやっと開いた。

 

 

叙述ミステリーで人物トリックが秀逸という有名な作品であることは知っていた。

 

そしてまんまと騙された。

 

買ったときには表紙の上に、通称「フル帯」がかけられていたのを取り出す。

 

そこに書いてある。

 

 

最後の数ページ、物語は180度ひっくり返る

 

はい、そのとおりでした。

 

そんな作品なので、内容は書きませんが、まず100%騙されると思う。

 

タイトルが示すように、裁判が関係するので友人の弁護士ノモに勧めようかな。

 

 

この作者、小泉喜美子さんは酒好きで階段から落ちて亡くなった。

 

51歳の若さで、今から60年前である。

 

絶版になったのち、再版されることになり、こうして読むことができたことに感謝。

 

これもまたいつか読む楽しみができた一冊。

『殺戮にいたる病』

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『変な絵』を読んだせいか、ミステリーを読みたくなり、有名な作品を読み始めた。
 

 



するとなんとなく知っている展開に気付き、ブログで調べてみる。

こういうときにこのブログは役に立つ。

もともと日記のつもりで書いていたから、読んだ本はほとんど書いているはずだから。

するとあった。

2013年に読んでいた。

10年前の記憶はうっすらすぎて、読んだことのないものとして脳内にしまわれていた。

で、内容といったら殺人鬼であること、最後に思いっきり騙されたということくらいしか覚えていなかったので、初見のように読めた。

次々とページを繰っていき、早く最後にたどり着きたいと思い、どれくらいかかるのかと知りたくなって、インターネットで1ページってどれくらいかかるのかを調べてみた。

すると一冊読むのに3〜4時間が多いとあったが、ビジネス書とか飛ばし読みもできるもので、小説になるとやはり時間がかかるとあった。

さらに難しいものや、想像をしながら読むとなると当然時間はさらに費やすことになる。

ではこの本を読むのに自分はどうだろうかとストップウォッチでラップ測定をしていった。

すると30数秒から40秒後半となり、平均的にすると40秒弱として100ページが1時間となった。

それなら4時間くらいで読めると考え、小説に戻ると、結果100ページ後にはおよそ1時間だった。

ちゃんと一字一句を見逃さないようにして。

なんといってもミステリーだから伏線をしっかり入れておかなければならない。

結局、面白くて早く読み終えた。

最後に湧き上がる「騙されたー!」感はやはり今回も訪れ、呆然となるのを止めるかのように最初や途中のページに目を通すことになった。

この見事すぎる叙述トリックを知ったうえで、今すぐ読み返して愉しむ方法もあるがやめておく。

またいつか忘れたころに読んで、この体験をしたいから。

『変な絵』

昨年最後に読んだ『変な家』の作者、雨穴氏の第二弾をAudibleで読了。

 

それはAudibleのアプリにはちゃんと添付資料として、絵が見れるようになっていることを知ったからだ。

 

『変な家』のときはそれを知らないで、図面が見れなきゃダメだろうと思い、Kindleで購入して読んだ。

 

 

前作の家そのもの自体からミステリーが生まれているのとは違って、ある事件の謎を解く鍵が絵となっている。

 

人物、時が絡み合っている構成で、最初の章が終わって「え?」と拍子抜けしたが、それは序章でありそこから先を繋げていきながら読む楽しさがあった。

 

すでに『変な家2』が発売されているし、来月15日には映画が公開される。

 

その映画の主題歌をアイナ・ジ・エンドが歌っているのが気になる。

 

さて、原作の表現を、どんな映像で見せてくれるのだろうか。