イタリア好きとしては観たかった作品。
始まりの音楽から心を動かされ、途中で流れるオペラ、映像に惹きつけられる。
これらはイタリア映画の、いやイタリア人の美的センスだろう。
物語は、ムッソリーニが70年ほど経った現代に戻ったらどうなるかというコメディ。
コメディといっても現代のイタリアを風刺したブラックコメディである。
では、イタリアの現状を知らないと楽しめないかというと、もちろんイタリア人ほど感情移入は出来ないかもしれないが、現代人、現代社会に通ずる問題提起がされているので、自分自身に問いかける。
突如空から降ってきたムッソリーニは偽物だが、徹底した本物を真似する芸人だと思われテレビに出演して大人気となる。
移民問題や貧困、失業といった低出生率に表される将来的に希望を持てない若者たちに強い指導者を求める志向が生まれてムッソリーニの考えが賛同されていく。
もう一度、帝国を作ろうとするムッソリーニは「いい国をみんなで作ろう」とファシズムを提唱する。
愛する映画『ライフ・イズ・ビューティフル』同様、ユダヤ人のアウシュビッツでの虐殺も取り上げていて、そのシーンはとても感慨深く、これから観る人のために話せないが、心を締め付けられる名場面だ。
ムッソリーニは悪いことも行ったが良いこともしたそうで、彼の住まいは今も観光場所として公開されていて、映画でも映し出される。
本人はイタリア人によって処刑されたが、こういうところは他の国とは違う資質だろうか。
ムッソリーニが現代人を見て、SNSで人をうらやみ、恨みが蔓延すると言うが、この前読んだ佐藤優氏の本でもそうだが、SNSは何か危険な方向に向かっている気がする。
また、劇中で右派は左寄りのことを言い、左派は右寄りのことを言う、とあった。
大衆に迎合するポピュリズムを使い政権を取る姿勢や、自国ファーストといった風潮は70年以上経った今、逆戻りをしていく人間の学習できない愚かさ、歴史は繰り返すの兆候ではないだろうか。
どうしていけば良いのかは私には分からないが、金が人の心を狂わしていることは明らかだと思う。
チャップリンの言葉をいつも忘れない。
「人生に必要なものは勇気と想像力と、ちょっとのお金」
それと現代およびこれから必要なものはグレタ・トゥーンベリの地球温暖化問題しかり、自然の恵だと思う。
ドイツで作られた『帰ってきたヒトラー』に続いてイタリア版と言われるので、劇場で観れなかったヒトラー版を観てみようと思う。
それと、来月上映される、大好きなイタリア監督パオロ・ソレンティーノの最新作が紹介されていた。
一ヶ月以上あるが待ち遠しい。
BOBI